タイで営業するとき、「タイ語か英語か」で迷う日本人担当者は多い。答えは一つではない。業種と相手の役職レイヤーによって最適解が変わる。この記事では、製造業・IT・食品・商社の4業種と、決裁者/現場層の使い分けを具体的に解説する。
業種別マトリクス: 言語をどう選ぶか
業種によって商談相手の英語リテラシーは大きく異なる。たとえばBangkokのIT企業は英語での商談が主流だが、ChonburiやEECエリアの製造ラインでは現場担当者がタイ語しか話せないケースが多い。まず業種ごとのデフォルト言語を把握しておくことが出発点だ。
| 業種 | 決裁者層 | 現場・調達層 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 製造業(日系) | 日本語 or 英語 | タイ語 | EEC・Chonburi工場はタイ語必須 |
| IT・SaaS | 英語 | 英語 or タイ語 | Bangkok中心、英語リテラシー高め |
| 食品・流通 | タイ語 + 英語 | タイ語 | バイヤーはタイ語が圧倒的に通りやすい |
| 商社・卸売 | 英語 or 日本語 | タイ語 | JCC加盟企業は日本語通用ケースも多い |
表の通り、決裁者と現場で使用言語が分かれる業種が多い。特に製造業では「契約は英語・日本語、現場交渉はタイ語」という二重構造が標準だ。この二重構造を意識するだけで、商談の失敗率が大きく下がる。
決裁者層 vs 現場層、レイヤーで切り替える
タイ企業のCEO・CFOクラスはBangkokの有名大学や海外留学組が多い。英語でのプレゼンが通用するどころか、英語で話しかけたほうが「プロ感」が出て好印象を持たれる場面もある。
一方、現場担当者・購買担当は別だ。English-speaking staffは限られ、英語メールを送っても開封されないまま埋もれるケースが続出する。実際、タイ語で送ったCold Emailの開封率は英語のみの場合と比べて約1.6倍という調査結果もある。
つまり、「誰に届けるか」が言語選択の軸になる。「この案件の決裁者は誰か」「窓口になる担当者は英語を読むか」。この2点を確認してから言語を決める癖をつけることが大切だ。BOIの案件や外資系との商談は英語で問題ない。タイ国内の中堅・中小企業攻略にはタイ語が武器になる。
テレアポはタイ語 1 択、Cold Email は英語 + タイ語の併用
テレアポについては議論の余地がない。タイ語1択だ。英語で電話をかけると「わからない」と即切りされるか、英語担当者に転送されてそこで話が止まる。Chonburi工場への電話でタイ語を話せる担当者が出てくる確率はほぼ100%だが、英語話者が出てくる確率は3割に届かない。
Cold Emailは戦略が変わる。英語件名 + タイ語本文の組み合わせが現時点でもっとも開封・返信率が高い。理由はスパムフィルターにかかりにくく、かつタイ語本文が「自社に向けて書かれた文章」と認識されやすいからだ。
- 件名: 英語(例: "Partnership Inquiry from Japan")
- 本文 1〜3行目: タイ語で要件を端的に書く
- 本文 4行目以降: 英語 or タイ語で詳細
- 署名: 日本語・英語・タイ語の3言語で社名・担当者名を記載
このフォーマットだけで返信率が1.4〜1.8倍になるケースが多い。Cold Emailを1言語だけで送っている企業はすぐ見直すべきだ。
LinkedIn は英語、Facebook Messenger はタイ語が反応高い
SNSチャネルでも言語と媒体の相性がある。
LinkedInはタイのビジネス層でも普及が進んでいるが、利用者はBangkokのホワイトカラー・外資系勤務者に偏っている。英語プロフィールが多く、英語でのDMが自然に受け取られる。タイ語で送っても通じるが、「英語話せる相手と思われたい」という印象管理が働くため英語のほうが返信率は高い。
Facebook Messengerは事情が逆だ。タイでは中堅・中小企業のオーナーや現場責任者がFacebookを現役で使っている。タイ語でのメッセージは友人・知人感覚で届き、返信率が格段に高い。タイ語で送ったメッセージの返信率は英語比で約2倍というデータも出ている。
LINEも見逃せない。タイでは法人営業でもLINE OAを使ったアプローチが定着しており、タイ語でのやり取りが基本だ。LinkedIn→英語、Facebook Messenger→タイ語、LINE→タイ語という使い分けが現場では標準になっている。
翻訳の落とし穴 — Google 翻訳だけでは商談につながらない
「タイ語は Google 翻訳でいいのでは?」という発想はよくある。しかし商談で使うタイ語には落とし穴が多い。
まず敬語体系の問題がある。タイ語では相手の性別・社会的立場によって使う語尾・単語が変わる。Google翻訳が出力するタイ語は敬語が不安定で、格下扱いされた印象を与えることがある。特に決裁者層へのメールでこれが起きると、返信が来ないまま終わる。
次に業界用語の翻訳精度だ。製造業の仕様書・見積書に出てくる技術用語や、EEC・BOIの補助金関連の行政用語は、Google翻訳ではしばしば誤訳が出る。誤訳のまま送った見積書で条件の取り違えが起き、交渉が振り出しに戻った事例は一件や二件ではない。
さらに文化的文脈のズレがある。タイ語には相手への配慮や間接表現を重視する文化がある。直訳すると「断っている」「急かしている」と受け取られる文章になりやすい。ネイティブが手を入れるだけで反応率が大きく変わる理由がここにある。
コスト削減のために翻訳を省略することは、むしろ商談の機会損失につながる。Google翻訳は叩き台として使い、ネイティブチェックを必ず挟む運用を推奨する。
言語選定 5 ステップ チェックリスト
タイ営業で言語を選ぶ際の判断フローを5ステップに整理した。商談前のルーティンに組み込んでほしい。
- ターゲット企業の業種と規模を特定する — 外資系・タイ国内大手・中小ローカルで英語リテラシーが大きく異なる。
- アプローチする相手の役職を確認する — CEO・CFO → 英語 or 日本語。現場・調達 → タイ語。
- チャネルに合わせて言語を選ぶ — LinkedIn → 英語。Facebook/LINE → タイ語。テレアポ → タイ語。
- タイ語を使う場合はネイティブチェックを挟む — Google翻訳は叩き台のみ。敬語と業界用語は必ずネイティブが確認。
- Cold Email は英語件名 + タイ語本文の二言語構成にする — 開封率・返信率のデータが最も良い組み合わせ。
この5ステップを順番に踏むだけで、言語選択のミスはほぼなくなる。業種と役職レイヤーが軸であることを忘れなければ迷わない。
まとめ — 言語は「ターゲットを定めてから決める」
タイ営業における言語選択は、業種・役職・チャネルの3軸で決まる。「英語でいいか」「タイ語を用意するべきか」という問いの前に、まず「誰に何のチャネルで届けるか」を固めること。それだけで成果が変わる。
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