タイ進出した日本の中小企業の約 6 割が、営業フェーズでつまずく。製品は良い。価格も競争力がある。それでも「なぜか売れない」。原因は営業のやり方にある。よくある 5 つの失敗パターンと、具体的な回避策を整理した。
失敗パターン①: 駐在員ゼロでフルリモート営業に固執
「コストを抑えたいから、まずはリモートで試したい」。その判断が、最初の壁になる。
タイのビジネス文化では、対面の信頼構築が契約の前提だ。日本本社から Zoom でプレゼンしても、「この会社は本気で入ってくる気があるのか」と疑われる。
実際、あるバンコクの製造業バイヤーは「日本から来たことすらない会社からの提案は後回しにする」と話す。同業他社が展示会に出展し、名刺を交換し、食事をして関係を作っている間、リモート組は土俵にすら上がれていない。
回避策は 2 つだ。①年に最低 2 回、METALEX や Manufacturing Expo などの展示会に足を運ぶ。②現地に月数日だけ滞在できる営業代行を使い、初期の顔出しを補う。駐在員ゼロでも「現地に人がいる状態」は作れる。完全リモートとの差は大きい。
失敗パターン②: テレアポだけに依存して打ち手が枯渇
日本でテレアポが当たり前の会社ほど、タイでも同じ手法を持ち込む。結果、3 ヶ月で打ち手が尽きる。
タイでは、知らない番号からの電話は出ない人が多い。特に製造業の調達担当は、代理店経由や紹介を好む。Cold Call でのアポ獲得率は日本の半分以下になることも珍しくない。
加えて、タイのビジネスパーソンは LINE と Facebook を日常的に使う。メールより LINE のほうが返信が早い、という場面が日常的にある。テレアポ一本では、そもそも接触できるチャネルが狭すぎる。
回避策: テレアポ・Cold Email・LinkedIn・LINE・展示会 BtoB ネットワーキングを組み合わせるマルチチャネル設計が必須だ。在タイ日本商工会議所(JCC)のイベントで紹介ルートを作るのも有効。テレアポは補助手段として位置づける。
失敗パターン③: 日本語・英語のみで、タイ語ローカライズを軽視
「英語があれば大丈夫」は半分だけ正しい。バンコクの大企業では英語が通じる。だが、ラヨン(Rayong)の工業団地や、地方の中堅メーカーに入ると状況が変わる。
購買担当や現場エンジニアは、タイ語でしか資料を読まない人が多い。英語の会社概要を渡しても、読まれずに棚に積まれる。ある日系機械メーカーは、タイ語パンフレットを作った後、同じエリアでの問い合わせが月 3 件から 9 件に増えた、と報告している。
LP やメール本文のタイ語化だけでなく、提案書・見積書・アフターサポート FAQ のタイ語対応まで視野に入れる必要がある。
回避策: まず会社概要 1 枚とメールテンプレートをタイ語化する。翻訳はプロに頼むと 1 万円前後で済む。EEC(東部経済回廊)エリアを攻める場合は特に早めに着手したい。
失敗パターン④: 現地代理店任せで KPI も把握できない
「タイは代理店に丸投げでいい」という誤解が根強い。代理店契約を結んで安心し、3 ヶ月後に「どこに営業しましたか?」と聞いても、明確な答えが返ってこない。これが典型的な失敗だ。
代理店はほかにも複数のブランドを扱っている。優先度は、売りやすいもの・コミッションが高いものから上がる。放置すると、自社製品の優先度は自然に下がる。
また、「何社に提案したか」「どこで断られたか」「競合他社との比較でどう見られているか」といった情報が本社に届かない。この情報ブラックアウトが最も怖い。次の手を打てなくなるから。
回避策: 代理店との契約に KPI 条項を入れる。月次で「訪問社数・提案件数・商談フェーズ別の数」を報告させる。最低でも四半期に 1 回は現地に行き、代理店担当者と同行営業する。成果の見える化が関係を引き締める。
失敗パターン⑤: 最初から完璧を狙い、初期テストを軽視
「準備が整ってから動く」。この判断が、参入を 1 年遅らせる。
LP を完璧に作り込む。代理店網を整備する。現地スタッフを採用する。全部そろってから動こうとすると、市場の実態を知らないまま設計だけが膨らむ。BOI 優遇や EEC 政策も、実際に現地を動かさないと活用の具体策が見えてこない。
あるタイ進出支援の現場では、最初の 3 ヶ月で顧客インタビュー 10 社・商談 5 件をこなしたチームが、6 ヶ月で最初の契約を取った事例がある。一方、完璧な準備に 6 ヶ月使ったチームは、その後さらに 9 ヶ月かかった。差は「早く動いたか」だけだった。
回避策: 最初は「80 点の資料・70 点の LP・5 社への Cold Email」で十分。反応を見てから磨く。テストに使えるリストと、最低限のタイ語メールがあれば、来週から動ける。
5 つの失敗を回避する 90 日プラン
具体的に何から始めるか。3 ヶ月でゼロから動く流れを示す。
Month 1(仕込み)
- ターゲット業種・エリア(バンコク or ラヨン EEC)を絞る
- 会社概要・提案書をタイ語化(最低 1 枚)
- Cold Email + LinkedIn + LINE のテンプレート作成
- ターゲットリスト 50 社をリサーチ
Month 2(接触)
- マルチチャネルで 50 社にアプローチ
- 返信・反応のあった 10 社をセグメント化
- JCC イベント参加または展示会視察(現地感覚をつかむ)
- 代理店候補 2〜3 社と非公式ミーティング
Month 3(商談・検証)
- 商談 3〜5 件を実施。議事録を日本語でフィードバック
- 断られた理由を整理してアプローチを修正
- 代理店と KPI 付きで正式契約するか判断
- 次の 90 日プランを策定
このサイクルを回すことで、「準備ばかりで動かない」罠を避けられる。90 日後には、必ず生きた情報が手元にある。
まとめ — タイ進出は「動きながら学ぶ」
5 つの失敗パターンに共通するのは、「慎重すぎる」か「任せすぎる」かのどちらかだ。リモート固執・テレアポ依存・タイ語軽視・代理店丸投げ・完璧主義。どれも悪意からではなく、日本流の慎重さから来ている。
タイ市場では、小さく動いて早くフィードバックを得るほうが圧倒的に速い。最初から正解を出そうとしなくていい。動きながら学ぶのが、タイ進出の現実だ。
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